SIENCE
1/OCTOBER/1998
屋 久 島
屋久島は、九州本土の南端佐多岬の商およそ60kmにあって、周囲が100km余り、面積500km程の丸い島で、
九州一高い1935mの宮之浦岳を中心に山々が重なりあい、洋上アルプスという別名を持っています。
島の人々が奥岳と呼ぶ中央山群を中心に、海岸からそびえる1000m前後の前衛の山々がとりまいています。
標高差2000mの島は、輝く太陽と雨の恵みを受けて植物相が豊かで、山々は緑の森におおわれ、森林の島
として知られています。
また、離島であるという条件は多数の固有種を誕生させ、屋久島の植物誌のうえで大きな特徴となっています。
海底の粘板岩に花崗岩のマグマが貫入、隆起して誕生したという屋久島は、海から山へと急激に変化する険しい
地形に特徴があり、地形性の気象や植生に大きな特徴を与えています。
東シナ海と太平洋の間に位置する山の島は、大陸と大洋の気象のはざまにあって、天候の変化が激しく、その上
暖流の海から発生する水蒸気も加わって非常に雨量が多く、一年間の雨量は、平地で4000mm以上、標高1000m
程の山中で、8000〜9000mmに達しています。
北緯30度のわずか北にある屋久島は亜熱帯気候でありますが、標高差による気温の変化が著しく、標高2000m近
い山項では、亜寒帯に近い気温であります。
平地ではアコウやガジュマルなど熱帯の要素を混えた照葉樹林が広がり、そして、山上へと続来ます。
標高500mあたりからシイやカシの多い照葉掛林の中に、ツガや屋久杉などの針葉樹が点々と姿をあらわし、針葉樹
と広葉樹の混交林帯を形成しています。針広混交林は、日本の山地植生の原型といわれており、日本固有のスギを
優先種とする森林植生が現存する自然林としては非常に価値が高いと評価されています。
島の面積の約76%を占めている屋久島の国有林は、上屋久、下屋久両営林署が管理しています。
縄文杉をはじめとする屋久杉は、今や屋久島の代名詞みたいになって参りました。
これら屋久杉著名木に代表される屋久島の自然は世界遺産条約による自然遺産として認定されようとしています。